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【授業レポート】千百年の時を超えて知りたい、北野天満宮「曲水の宴」

最終更新: 3月5日

2019年10月27日(日)開催「千百年の時を超えて知りたい、北野天満宮「曲水の宴」」の授業レポートです。



曲水の宴(きょくすいのえん)。

庭園を流れる小川の淵に出席者が座り、酒を入れた盃が自身の前を通り過ぎるまでに兼題に即した詩歌を披露する雅な遊び。元々は古代中国の3月3日に行なわれ、日本では桓武天皇、宇多天皇の御代に春の訪れを祝う行事として盛んに開催されたそう。現代の京都では、上賀茂神社で春の行事、城南宮で秋の行事として開催されてきました。


さて、この授業では、11月3日に北野天満宮で行われる「第6回 曲水の宴」の本番を前に、曲水とは? なぜ北野天満宮さんで? なぜ秋に? など、諸々の謎を解き明かすべく、門前の上七軒にのれんを掲げる、「有職菓子御調進所 老松」当主・太田達さんにお話をうかがいました。参加者もその雰囲気、内容の為か、紳士淑女比率が高い顔ぶれでした。




そもそもの曲水の宴は「流觴曲水(りゅうしょうきょくすい)」。「觴」は杯、「曲水」は曲がりくねっている小川のことを指します。


温かくなり、水の温度に耐えうる時期となったころ、水辺で禊を行なう神事が由来だそうです。発祥の中国では、3月3日を桃の節句として季節の変わり目を祝い、長寿を願ったこととも関連付け、「食と芸能」の視点が披露されました。その後、朝鮮、琉球を経て、聖武天皇の時代に本土に伝来。盃が流れて来るまでに漢詩を考え、盃を飲み干した後に詠むのがルールだったそうですが、酔っ払って歌を詠むことができず、宴の後で提出された歌人もいたとかいないとか。一時断絶した時期はあるも、薩摩・島津氏が造営した鹿児島・仙巌園や欧州藤原氏の平泉・毛越寺等で再興されたことなどが語られました。こういった禊の行事が転じて、戦後「流し雛」の風習が生まれたそうです。なるほど、盃を流すさまに似ていますね。


当時、詩といえば成人男性の芸事の漢詩のこと。曲水の宴も男子会であったはずですが、現在復興されている曲水の宴ではどこも、女性も交えて「和歌」を詠むスタイルのよう。「やはり、華やかさも欲しいですものね」とおっしゃる太田さんの意見に、一同思わず納得(笑)。しかし、「和魂漢才(わこんかんさい)」の精神を旨とし、高い文才を誇る官・菅原道真公の御心に適(かな)うようにと、ここ北野天満宮の「曲水の宴」では、男性が漢詩、女性が和歌を詠む、和漢朗詠形式をとることにしたそうです。






また、詩歌の前に、白拍子(しらびょうし)の舞を披露するのも、かつて詩と舞は一体であったことから、など、すべてに意味があることを教わりました。


また、春の行事を11月3日にも行う理由は、秋もまた季節の変わり目であることに加え、古今和歌集にも歌われる菅原道真公の「このたびは 幣もとりあへず手向山 もみじの錦 かみのまにまに」が示す通り、北野天満宮は紅葉(もみじ)の名所であるから、とも解説がありました。


そしてこれは余談ですが、道真公には「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」(拾遺和歌集)の歌もあり、北野天満宮は春には梅の名所として有名です。でも、この梅園は戦時中に一度伐採されており、戦後再び梅園として復興され今日に至るものであるという史実に、一同また驚いたのでした。こんな風に、先生の話は、本筋から外れたように思えていつの間にかまた戻り、時代も国境もまたいで地名や人物名がポンポン飛び出すので、レポーターとしては(たぶんほかの受講生のみなさんも!)ついていくのが大変でしたが、実は受講生に紛れて、この復興に尽力された北野文化研究所の方々も飛び入り参加されていて、絶妙な合いの手も入る、白熱授業でした。



ちなみに、老松さんでは、豊臣秀吉による天正の「北野大茶会」にちなんだ「七軒だんご」(黒蜜ときな粉の団子。写真は、上七軒歌舞練場「寿会」にて)を秋のもみじ苑で販売されているそう。また、北野天満宮のそばを流れる「紙屋川」は、かつては友禅流しが行なわれた場所でもあり、漢詩和歌だけではなく、お茶、和菓子、染織物すべてを俯瞰した上で、「いい水があるところに文化は生まれる」との言葉で授業はしめくくられました。



多層的な文化土壌を持つ京都・北野の地で行われる「曲水の宴」。漢詩と和歌を交歓しあう、11月3日の宴への期待が高まる授業でした。



レポート:白倉幸治

写真:江村安海

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