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【授業レポート】日本酒造りの謎に迫る!~清酒酵母×サイエンスの世界~

更新日:3月28日

※2022年1月8日(土)開催「日本酒造りの謎に迫る!~清酒酵母×サイエンスの世界~」の授業レポートです

 

小さいカラダに大きなチカラ 目が離せない!かわいいけど謎だらけの酵母たちの働き♪

こんにちは。ボランティアスタッフのうえです。


1月の午後、冬なのにポカポカ陽気の真っ青の空の下、七条大橋の東にあるファミリーマートの2階。「サカタニ集酉楽(しゅうゆうらく)」の奥にあるホールで、授業が行われました。




参加者20名のうち、スマ大の授業参加が初めてという方が9名も!


清酒酵母の授業だから酒屋さんで、という趣向なのですが、ここでは、ワンコインで3種類の日本酒の利き酒もできたり、ギャラリースペースがあったり、今回お借りしたホールでは落語やコンサートもされるという「一体何屋さんなの!?」な場所。それもそのはず。オーナーの酒谷宗男さんが、演劇経験あり、バンド経験ありと話の尽きない方で、「七條大橋をキレイにする会」も主催されていて、本職のお酒のことだけでなく、七条大橋についても熱く語ってくれるパワフルな方なのです。


さらに、ホールの窓からレンガの建物がほんの少し見えるのですが、実は伏見にある松本酒造の酒蔵跡なのだとか。ここが創業の地と知って、日本酒とおぼしき参加者のみなさんがざわつきます(笑)。


そんな今日の「教室」にお迎えする本日の授業の先生は、渡辺大輔さん。


元国税局の財務技官(酒税も関連している)も経験され、酒類総合研究所で酵母の研究をした後、農学部の准教授で、現在は、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域ストレス微生物科学研究室に在籍されています。



授業コーディネイターから「本日の先生は・・・」と紹介されると、ご本人は「先生と呼ばれるのは苦手で」と言われたので、「それじゃあ、今日はダイちゃんで!」ということに。研究者の先生なのに、いきなりそんなにフランクに接してもいいものかとちょっと不安になりましたが、自己紹介でも「趣味:かわいいもの探し」という、とてもチャーミングな方でした。


授業は座学形式ですが、なぜかダイちゃんのかたわらには、利き酒用のおちょこがずらり! 飲む気満々? いやいや実は、参加者のみなさんと「一緒に飲んでいるように」リラックスして聞いてもらえたらというメッセージ。


まずは隣同士で自己紹介し合うアイスブレイク。



酵母がアワアワになるみたいに会場が温まったところで、日本農芸化学会の由里本博也氏(京都大学農学研究科)からのあいさつ。今回の授業は年に一度の日本農芸学会と京都カラスマ大学の共催授業で、重ねること8年目だそうです。




ダイちゃんの講義の前に、みんなで今回の授業に出てくる「醸造」「発酵」「微生物」「酵母」の4つの用語の確認をしました。




「微生物」
いたるところにいる目に見えない大きさの生物。(顕微鏡で見える生物)バクテリア、細菌など。良いものも悪いものもいる。

「発酵」
微生物を使って、「人の役に立つもの」をつくること。その反対に「人の役に立たないもの」をつくることを腐敗と言っているが、厳密に違いはない。※役に立つか立たないか、好きか嫌いかは、人によって判断が異なるため。

「醸造」
発酵を微生物を使ってすること。(醤油やお酒はこれでつくられる。)

「酵母」
菌ひとつでできているもの。単細胞。酵母=イースト菌。


これらを、踏まえた上で、授業スタートです。

情報量たっぷりだったのですが、整理したら、以下のような項目になりました。



①まずは、お屠蘇の話から。
②お酒って、実は微生物が作ってたんですね。
③お酒をつくってくれている酵母さんを知ろう!
④酵母さんは、社会にも役立っている?
⑤清酒酵母さんをサイエンスしてみよう!
⑥酵母さんは、スーパーマン!?



① まずは、お屠蘇(とそ)の話から。

「みなさん、お正月にお屠蘇を飲みましたかー?」との問いに、手を挙げた人はほんの数名でしたが、屠蘇散をバッグの中に忍ばせている強者もいました(笑)。そもそもお屠蘇というのは、なんでしょうか?





「え?お正月に飲むお酒のことじゃないの?」って僕は思ったのですが、


お屠蘇とは・・・
「日本の文化と結びついているもの」「飲むだけで良い、縁起物のお酒」「屠蘇散(とそさん)と呼ばれる510種類の生薬を配合したものを日本酒やみりんに漬け込んだ薬草酒」


そして関西、関東以北、九州など地方によって少しずつ違いがあり、関西では日本酒やみりんと屠蘇散を合わせたもの、関東以北では日本酒をそのままお屠蘇として飲むこともあるそうで(僕のイメージはこれです)、九州の熊本では赤酒、鹿児島では黒酒が使われるそうです。


お正月の席で使える雑学が一つ増えました♪

② お酒って、実は微生物が作ってたんですね。

で、ここからが、サイエンスな話です。


お酒とひとことで言っても、いろんな種類がありますよね。

例えば、ワイン、ビール、そして日本酒。僕にとって身近なお酒はこの3種類ですが、同じお酒でも、それぞれ作り方が違うことを詳しく知りませんでした。



ワインは、「果汁」→<発酵>「ワイン」(酵母)。単発酵というそうです。

次にビールは、「麦芽」→<糖化>→「麦汁」(水+ホップ)→<発酵>→「ビール」(酵母)。ワインと違って、麦芽を麦汁に変えてから発酵が入るので、複発酵というそうです。

それじゃあ、日本酒はというと、「蒸米」→「麹」(種麹)→「酒母」(酵母+水)→「もろみ」(水)<糖化+発酵>→「清酒」「酒粕」。ビールが、「糖化と発酵を別」で行うのに対して、清酒は「糖化と発酵を同時」に行うので、並行複発酵というそうです。


清酒って、「杜氏(とうじ)」がつくっていると思ってたんですが、そこには、微生物の酵母(イースト菌)が密接に関わっているようです。彼らの働きによって、おいしいお酒(アルコール)が飲めるわけですね。


③ お酒をつくってくれている酵母さんを知ろう!

そこで、お酒をつくってくれる酵母さんの登場です。


酵母の「種(しゅ)」の名前は「サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)」。ちなみに、ヒト(人間)の種は「ホモサピエンス」。

サッカロマイセス・セレビシエ

サッカロマイセス・セレビシエ

サッカロマイセス・セレビシエ


舌を噛んでしまいそうですね。呪文みたいで覚えられそうもありませんが、せっかく学んだので、誰かに、この名前を言いたくて仕方ありません。


次に酵母の種類ですが、「実験室酵母」「バイオエタノール酵母」「パン酵母(ドライイースト)」あたりは、みなさんも聞いたことあるでしょうか。


醸造用の酵母の中でも、「ワイン酵母(の多くの株)」「上面発酵ビール酵母(エールタイプ)」「清酒酵母」「焼酎酵母」「泡盛酵母」が、サッカロマイセス・セレビシエさん。ちなみに、


ワイン酵母(の一部の株)」は、「Saccharomyces bayanus」

「下面発酵ビール酵母(ラガータイプ)」は、「Saccharomyces pastorianus」

「耐塩性酵母(醤油・味噌用)」は、「Zygosaccharomyces rouxii」


彼らは「サッカロマイセス・セレビシエ」さんの親戚みたいなものだそうです。


サッカロマイセス・セレビシエ。もう覚えましたか?(笑)



④ 酵母さんは、社会にも役立っている?

酵母の種類のうち、「実験室酵母」とはどういうものでしょうか?


生物には、「真核生物」と「原核生物」という2種類があるそうです。

「真核生物」は、ヒト、動物、植物、真菌(酵母、麹菌など)、原生生物(アメーバなど)

「原核生物」は、細菌(大腸菌、乳酸菌など)

ヒトのことを調べるために、同じ真核生物である酵母が、モデルとしてバイオ研究に広く用いられているとのこと。これからも新しい発見があるかもしれませんね!


また、「ゲノム」というキーワードも出てきました。

ゲノム=あらゆる生物がもつ”生命の設計図”」だそうで、これによって、生物を丸ごと研究できるという革命が起こったそうです。それぞれの酵母のゲノムを比較することで、より細かな違いや、酵母の働きの違いがわかってくるみたいです。


例えば、なぜアルコール発酵力が優れているのか?

それぞれのお酒づくりに適している理由とは?などを調べていくようです。


「ゲノム」が見れるようになったことで、

これまでよりも細かい情報がわかるようになったことなのかな。


それにしても小さい酵母でも遺伝子をいっぱい持っているんだなーって思いました。

やっぱりすごいよ。「サッカロマイセス・セレビシエ」さん。

⑤ 清酒酵母さんをサイエンスしてみよう!

ダイちゃんが研究している清酒酵母さんの歴史ですが、日本では明治28(1895)年に矢部規矩治(やべ きくじ)博士によって初めて清酒酵母が報告されたそうで、これが清酒酵母のサイエンスの幕開けになったそうです。

何がすごいかって、酵母というものは、アルコール(エタノール)に弱いはずなのに、どうしてお酒がつくれるのかってこと。


⑥ 酵母さんは、スーパーマン!?

スーパーマンの体に酵母の頭がついたイラストがスライドに登場して、「清酒酵母は、エタノールに強いから、高濃度のエタノールを生成できる」という説明がありました。


本当にそうなのでしょうか?

酵母には、「ストレス耐性」と「アルコール発酵力」があるそうです。


しかし、このストレス耐性とアルコール発酵力は天秤になっていて、

▶︎ストレス耐性が高くなるとアルコール発酵力が低くなる。

▶︎ストレス耐性が低くなるとアルコール発酵力が高くなる。

という仕組みなので、バランスが大事になってきます。


お酒をつくる人からするとアルコール発酵力が高い酵母が欲しいので、そういう酵母を選んできた結果、「清酒酵母は、ストレス耐性を下げ、アルコール発酵力を高めた酵母を選ぶことで生まれた」ということになるようです。

ただし、酵母から見た場合、

▶︎長生きするためには、ストレス耐性が必要であり、

▶︎長生きするためには、アルコール発酵力が低いほうがいいわけです。

お酒をつくるのと長生きするのとは、全く逆ですね。

酵母は、長生きしたいけど、お酒好きの人たちのためには、短命になるってことなのかな?

ということは、「ストレスなんてへっちゃら!アルコールもつくれるぜ!」って言ってた「スーパー」酵母っていうのは、実は違っていて、本来の清酒酵母は、「働き者」酵母で、ストレスを受けても身を削り、人間様のために働きます。という、昔の「24時間働けますか?」的な姿なのですね。こうなるともう、他人事じゃありません(笑)。


ということで、長くなってしまいましたが、ダイちゃんの最後のまとめのひとこと!


「一滴一滴に蔵人たちと ”微生物” たちの「魂」が込められている!」



確かにそうだ。小さな酵母の働きとその酵母を大事に守り、研究してきた蔵人の「魂」を感じながら、お酒をいただかねばっ。と思いました。もちろん、今日、そのことを教えてくれた大ちゃんにも感謝して。


最後は、生徒のみなさんからの素朴な質問にダイちゃんが答えてくれていました。

僕が印象に残ったQ&Aを一つだけ紹介します。



Q. 「日本酒用以外の酵母で日本酒をつくったらどうなりますか?」
A. 「ワイン酵母でつくった日本酒も試されています。日本酒だけど香りが違う。日本酒も多様性が求められていて、個性や付加価値を研究されていますよ」


とのこと。

今後は、いろいろな酵母でつくられ「発酵デザイン」されたお酒がつくられるんでしょうね。楽しみです。

授業後のアンケートには、

「酵母を身近に感じることができました!」

「難しいお話を分かりやすく説明してもらえてよかった!」

「楽しかった!」

などの感想が寄せられました。

みなさん、ありがとうございました。


授業終了後は、ダイちゃん、由里本さんと生徒のみなさんが、のんびりと利き酒したり談笑したりされていました。ホントは僕もみなさんに交じって飲みたかったのですが、自転車で息子を迎えに行く予定があったので我慢して帰りました。「サカタニ集酉楽」での利き酒は、またの機会にしたいと思います。その時は、今日の酵母の授業を思い出しながら「サッカロマイセス・セレビシエ」と心の中で唱えてしまうんだろうな、と思うとちょっと心が温かくなりました。


レポート:うえ

写真:おしらさん



 

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