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【授業レポート】「本と暮らしのあるところ」ではたらいてみた、私のはなし

更新日:9月29日

※2022年7月9日開催「本と暮らしのあるところではたらいてみた、私のはなし」の授業レポートです。

 

こんにちは。ボランティアスタッフのおしらさんです。





今回の教室は、「鴨川納豆」でおなじみの藤原食品さんが貸してくださった、町家カフェ。まだ名前もついていない場所を、特別にお借りしました。


(みんな無事に辿り着いてくれるでしょうか。ドキドキハラハラ)



授業が始まる直前に夕立の雨が上がり、私たちスタッフも生徒のみなさんも、無事に全員集合。


少し遅れる人を待つ間、先生が着ている「京納豆」のTシャツの話、市井の人がコロナ禍で納豆を食べる機会が増えたという雑談が程よいアイスブレイクに(「鴨川納豆」は、フレスコでも買えるそうですよ)。


冒頭、先生の話が始まる前に、今回の会に対する生徒さん各自の思いを語ってもらいました。顔ぶれは、現役大学生から、教育関係、役所関係、エンジニアなど多様な背景を持つ11名。




「先週、豊岡のだいかい文庫に行ってきました!」

「先生のことが知りたくて」

「みんなの図書館をつくる自信が欲しい」

「しゃべれる図書館が作りたい」

「興味ある本、どんな本を薦めたのか聞きたい」


など、先生の生き方、人と人との繋がりを生み出す本、というところに興味があることが伺えました。


さて。今日、お迎えした先生は阿部花菜(通称・アベカナ)さん。地元の神奈川県で3年間、病院で脳神経外科での看護の仕事を経験してこられた看護師です。看護をする患者さんのほとんどが、病気のために寝たきりになったり、障がいや再発への不安を持ちながら生活していくことになる方々だったそうです。





病院で働く中で、治療を優先した 'cure' の看護よりも、病や障がい、不安を抱えながらも、自分らしくどう生活するかを考える ‘care' の看護を大切にしていきたいという気づきがあったと言います。


なぜなら、病院では救命のためのスピードが最優先され、悲しい出来事がすごく多いにも関わらず、患者さん一人ひとりに対してゆっくりと向き合うことができない。もう少していねいな言葉、自身の豊かな経験があれば救えたことがあったかもしれない、という思いを抱くようになったから。


そこで、2019年の夏。


「一度きりの人生。医療じゃない仕事に触れてみたいと思い、退職を決意しました」。


その熱の入った一言に、一同強く頷きます。





退職後、最初の訪問場所は山形県。選択理由は、お米食べ放題の農家兼ゲストハウスだったから、、、ではなく、3.11の影響から音楽フェスを通して東北に行く機会が多く、そこで生まれたご縁を通して受け入れをしてくださったからだそうです。


その後、2020年に帰郷。たまたま、脚本家・向田邦子さんの没後40周年の記念展覧会に関わり、アベカナさんの中で化学反応が起こります。


「人の心に響く言葉を磨きたい。本のある場所、かつ人とも関わることのできるはたらきができたらいいな」


そんな風に、自分の理想とするはたらき方をぼんやりと思い描けるようになってきた時、ちょうど兵庫県豊岡市に開設予定の『だいかい文庫』の求人を、twitterで知ることになります。


「居場所の相談員を募集します。クリエイティブな医療福祉職、求む!」


関東に生まれ育ったアベカナさんにとって、豊岡は、果たして何県にあるかさえもあやふやなくらい縁もゆかりもないまち。Zoomでの面談時は、地元の人が採用されるだろうなと思っていたそうですが、「採用通知がいただけるならば行きます!」と力強く宣言し、『だいかい文庫』で働くチャンスを得ます。


そうして、2021年3月から直近の6月まで、週末は『だいかい文庫』、平日は竹野海岸近くのゲストハウス『本と寝床、ひととまる』で勤められていたそうです。



カバンのまちとしてよく知られる豊岡市内の商店街にあり、しゃべれる図書館の『だいかい文庫』。店内には、書籍販売のコーナーと、オーナー制の本棚スペースが共存しているのだそう。


本棚を借りている70組のオーナーが、本棚に自身の名前を付け、自己表現をしている点が特徴。本に会う、本で調べものをするではなく、本を介してオーナーに会いに行く、あるいは文庫に集う人に会いに行く、コミュニケーションツールとしての本のある居場所という点が印象的でした。


アベカナさんは、看護師という自身のキャリアを活かし、隔週(第2、第4土曜日)に3時間の「相談の時間」にもお客さんを迎えます。


医療や健康にまつわる相談ごとばかりかといえばそうでもなく、家族でも友人でもない立場という斜めの関係性を活かした話の引き受け手として、あるいは、フラッと訪れる人に豊岡のおすすめスポットを紹介する町のコンシェルジュ的な役割も果たしていた、といいます。


機会を活かし、仕事における「できる」と「したい」を両立する姿勢を感じることができました。


そんな女神のようなパワフルなアベカナさんでも、時には心が疲れてしまうことがあったそう。


そんな時には、先輩の「人と接する職業をする人は、人じゃないものに接した方がいい」という言葉に従って、ゲストハウス近くの海や山を眺めに出ていたとの一言に、僕自身も心の中でポンと手を打ったのでした。



最後に、Q&Aからいくつかのやりとりを紹介します。


Q:おすすめの本を教えてください

A:まずは、だいかい文庫で人気だった本を2冊紹介します。

『セルフケアの道具箱』伊藤絵美(晶文社)
「ツレがうつになりました」で有名な細川貂々さんが挿絵を担当。自分が辛くなった時のケア方法を知ることができる。

『メンタル・クエスト』鈴木裕介(大和出版)
今日はこの場に持ってこれなかったのですが、DQ風に例えられた、心療内科医の作品。

次に、これは私が今後を考えるきっかけになっている本です。

『感じるオープンダイアローグ』森川すいめい(講談社現代新書) 
フィンランド発祥の対話療法「オープンダイアローグ」。人と話をするだけで80%の人が回復するデータがある。だいかい文庫で実践する中で、もっと自身の言葉の力をつけたいと思うようになった、きっかけの本。



Q:今後、自身が高めたい力はありますか?

A:「質問力です。解決を求めて人は来るけど、一緒に悩むことも大事。相手を引き出す質問する力がまだまだ弱いと思う。今後も質問力を高めていきたいです」

目の前の相手に、共感ではなく想像を働かせ、まず受け止め、関係性を築いていく姿勢が垣間見えました。


生活の支えとなるケアワーカーでありたい、「看護の力で面白く、優しく、やわらかく生きる」。相手、そして自分との約束を大事にして生きるそのしなやかさが、僕たちの心に強く響きました。





(レポート・写真:白倉幸治)


 

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