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  • 執筆者の写真京都カラスマ大学

【授業レポート】Vol.4/近寄ってみたら、みんなおかしい。「私の知らないぐるりのこと」

更新日:2022年12月15日

 

「近寄ってみたら、みんなおかしい。わたしの知らないぐるりのこと」、第4回目。聞き手は高木俊介さん、今回のゲストは、大学生のひかり(4回生)さんとミミさん(3回生)。




ふたりとも、京都で大学生活を送ることに憧れてやってきたはずなのに、ひかりさんは1回生の終わりから、ミミさんは大学生活自体がコロナ禍真っ盛りから始まってしまいました。


世界的パンデミック、新型コロナウィルス感染症蔓延の影響を受けて大学生活はどう変わったのでしょうか。そこには、話を実際に聞いてみないとわからないことが沢山あります。





実は、そもそもこの「私の知らないぐるりのこと」授業を作るきっかけになったのは、ミミさんのことばだった、と授業コーディネイターのやまくらあゆみさん。


『京都に来たのに、出会うはずだった大人に会えていないなぁ』という言葉に、ドキッとしました。コロナ禍の間、彼女たちは、初めてのバーやライブハウスの扉を開けて、さまざまな世界に触れるというような機会がなかった。そのことで、もしかしたら沢山のこのまちの「おかしい大人たち」との出会いを失ったかもしれない。そう感じたんです。この言葉がきっかけで、この『ぐるりのこと』というシリーズ授業を始めました」




ミミさんは、授業コーディネーターのあゆみさんと関わって、話をすることではじめて「もっと(知らない人、京都のこと、社会のことを)知りたいという欲が出た」といいます。


対して、ひかりさんは就職活動を経て大人との関わりが増えた、とのこと。


彼女たちの置かれた立場にしばらく耳を傾けていた高木さんは「仕方がないことだったけれども、近しい関係から出ないまま、ただただマジメでいるのはもったいないな」と切り出しました。


「だって、友達ってさぁ、ワルイつながりから始まるモンじゃない?」


たとえば、小さな秘密を共有するような間柄。つまり、興味のある場所に、何も考えずに飛び込んでゆくことも時には大切で、そうやって社会を生きてゆく術を身につけていくのだ、と高木さんは言います。


そして話題はコロナの影響下の大学生活はどんなものだったのか、と具体的なことへ。2回生からコロナ禍が始まったひかりさんと、入学当初から巻き込まれてしまったミミさんとでは、状況はかなり異なりました。




ひかりさんは、1年を境に、大学生活がぱっくりと変容してしまった印象をはっきり感じ

たそう。授業は突然オンラインになり、同級生とも疎遠になり.、、、.。それでも、近くに住んでいる親しい友人と会ったり、オンライン授業でも友人とこっそりふざけあったりすることで、楽しめる余裕はあったとのこと。





ミミさんの場合、そもそも入学式が行われませんでした。大学のポータルサイトを開くのが、大学生活の始まり、、、。.せっかく遠く地元を離れてやって来たのに、夏前にはいちど実家に戻ってしまいます。サークルはもちろんのこと、同じ課程の人とも会うことも叶わず、SNS でなんとかつながりを作って、友達を作ることが精一杯でした。





そんなふたりのリアルな話を聞いて、精神科医の高木さんは「最近は、大学生でも心の病にかかる人が増えてるんだ」と、深い実感を持って話します。


引きこもることは、自発的に行われるなら人格の形成にむしろ良いことでもあります。


ですが、「コロナ禍ではそれがあまりにも強制的に行われてしまったせいで、心の病をこれほどまでに多く引き起こす原因となってしまったよね」と言うのです。





逆に、引きこもったことでよかったことは何があったでしょうか。


ミミさんは引きこもっているうちに、意外なものにハマりました。スージー鈴木のエッセイ『恋するラジオ』を読みながら、出てくる楽曲をYouTube のライブ映像で追いかけ、曲を聴き漁り、その結果、なんと80年代後半に世を賑わせた吉川晃司というミュージシャンにどっぷりハマってしまった、というのです。ひとりでコンサートに行くまでのファンになりました。80〜90 年代のギラギラした空気感に、自分たちの生活には無いものを感じていたのかも?と振り返っていました。


ひかりさんは、時間ができてしまったおかげで、より一層勉強に火がついたそう。空白の

時間はそのままに受け止め、学びに転化しようというガッツを感じます。さらには、大学で作成していたフリーペーパーがコロナの影響で資金繰りが大変になっても、テレアポをとったり、店先に置かせてもらったりして、自力で状況を打開しました。


そして話は、1957年生まれで、70年代に同じく京都で過ごした高木さんの大学生活へ。医学部に入学した高木さんは、苦手な理系科目は友人に任せっきりにして、文化人類学のクラスに入り浸っていたそう。そこから、アフリカの音楽がこれからの日本に必要なんだ、と言って出資者を募り、ポーンと500 万円出してくれる大人に出会ったんだよ、というぶっとんだ話を披露してくれました。



そんな高木さんはふたりに、「若者にとって理不尽な状況が続いていたことに、怒りは湧かなかったの?」と質問します。


ふたりとも、ただただ状況にあたふたするばかりで、怒りが湧く間もなかったなぁ。と振り

返ります。


高木さんも、受講者のぼくたちも、天使みたいなふたりだなぁ、と感心。


「でもね。何が失われたか、もしかしたら大学生はまだ気づいていないのかもしれないな」と、ちょっと怖いことを、高木さんがポロリと言いました。


そのあとは、テーブルごとに分かれて、興味を持った話、自分たちの当時の大学生活のことや思い出話を共有。


これから京都で大学生活を送る方も参加していていたことがわかると、京都愛に溢れたコ

メントが寄せられることも。





「大人にとっての、この3年間はただあっという間だったけど、大学生にとってはかけがえのない時間だ、ということを改めて胸に刻んだ」


「コロナ禍で、学生はかわいそうだな、と思ってばかりいたが、実際に話を聞くことでイメージが変わった」


と、大学生の話にじかに触れることで、それぞれに気づきがありました。




実はこのレポートを書いている僕も、ミミさんと同じ大学3回生です。 少しずつ子供から大人になってゆくこの10代から20代への移行期だったここ数年、ずっと「安全圏」にいるように、と言われ続けてきた気もします。 安全とはなんでしょう。 良いことも悪いことも起こるはずの社会に、一員として参加する、ということのほんとうの意味を、このままでは取り違えることになりやしないか......と、もやっとした思いを、この日、ビールと一緒に呑み込みました。


深刻な学びが光る瞬間と、みんなの四方山話が良い具合にまぜこぜだった今回の「ぐるり

のこと」授業。




僕たち大学生にとっても、大人たちにとっても、「ここ最近どうだった?」という話を通じて、自分と周りで凝り固まってしまっていた「当たりまえ」の違いをチューニングできる貴重な機会になったのではないのでしょうか。


(レポート:さとし)




追伸)

「京都・一乗寺ブリュワリー」とのコラボレーションで開催しているシリーズ授業「近寄ってみたら、みんなおかしい。わたしの知らないぐるりのこと」。12 月はお休みいただいて、また来年の開催を目指します。


すぐ隣にあるはずな誰かのぐるりの日常から、新しい気づきを得られる機会を生み出すことを目指して、来年も活動を続けて行けたらいいなと思っています。


年末年始、1 年に一度というような、よく知っているはずの「ぐるりの人」ともゆっくり話してみる時間が比較的作りやすいタイミングかと思います。せっかくなので、食卓を囲んで乾杯しつつ、あなたのとなりの人、よく知っているはずの人とも、ぐっと近寄って話してみてくださいね。


(ホスト:高木俊介、授業コーディネーター:やまくらあゆみ)


 

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