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  • 執筆者の写真京都カラスマ大学

【授業レポート】小さく作って大きく届ける!〜映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』舞台裏

更新日:2023年8月1日

 

映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」監督の三好大輔さんと、書籍『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』の著者であり、本作の共同監督である川内有緒さん、そして、サプライズゲストに白鳥建二さんをお招きして授業が行われました。



授業が開かれた場所は「アトリエみつしま」です。



ここは、京都・大徳寺総門のすぐ近くにあるギャラリー兼制作アトリエで、西陣織の工場跡をリノベーションした建物だそうです。全盲の美術家である光島貴之さんがオーナーを務めています。2階のスペースは西陣織の展示などに使われていた畳の間で、広々としていて風情ある空間でした。


映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」は、全盲の美術鑑賞者である白鳥さん、そして白鳥さんに関わる人々との出来事を丁寧に、繊細に紡がれたドキュメンタリー作品です。アート鑑賞から生まれる会話がとても心地よい反面、今まで当たり前のように区別していた「見える/見えない」「健常/障害」の枠組みを揺るがされる作品でした。




授業では、川内有緒さんが白鳥建二さんと出会い、その日々をnoteに綴り始めたところから映画製作に至るまでのきっかけ、撮影の工夫や映像編集について、さらに自主配給映画ならではの裏話をお話ししてくださいました。





たとえば、美術館で作品鑑賞している場面では、見ている作品以外の写り込んでいる作品を編集で消すことにより、映画を見ている人が鑑賞中の作品に視点を集めるようにしたそうです。実際に三好さんが用意してくださった編集前の映像と見比べてみたら、画面のすっきりさが増していて驚きました。見比べるとわかるけれど、映画を見ていた時にはまったく気づきませんでした。このような細かな配慮が作品にのめり込ませてくるのかと目から鱗でした。この2時間にも及ぶ映画が、三好監督ひとりの撮影でつくられていたことも明かされました。


なんと、映像編集に10か月もかかったそうです。




前作である50分のドキュメンタリー映画『白い鳥』との違いもお話ししてくださいました。『白い鳥』には入っていた白鳥さんの友人のホシノマサハルさんのインタビューを、劇場版ではどれくらい入れるかについても議論があったそうです。


というのも、アーティストであるホシノさんが言葉は強いインパクトがあるため、あまりに多く使用するとホシノさんの印象が強すぎる映画になってしまう、しかし、ホシノさんを入れないと映画が成立しない…とずいぶん悩まれたのだとか。


一方で、劇場版にはマイティ(佐藤麻衣子さん)を多く登場させ、白鳥さんとマイティとの雑談が繰り広げられている場面を多く取り入れたそうです。プレビューを見てくれた方からは、雑談は不必要じゃないかという意見もありましたが、こういった雑談こそがこの映画の面白みなのではないかと思い、残したそうです。


「たとえば、お蕎麦屋さんのシーン」。


私たち参加者は「あれは絶対必要だった!」「いいシーンだった!」と言わんばかりに首を縦に振ります。






後半、白鳥さんを交えてのトークでは、いつカメラを回しているのかという話題になりました。三好さんはカメラを回しているときは白鳥さんに気づかれないように撮影していたとお話していました。でも、白鳥さんが台所で爪を研いでいるシーンで、うっかり「コトリ、」と三脚を置く音を立ててしまったことがあったといいます。このときは白鳥さんも気づいたようで、その頃には撮影されることに少しうんざりしていたことから、わざとしかめ顔を作ってみせたところ、実は三好さんから「手元しか撮影していなかったから、気づかなかったよ」と言われたそうです。そんな風に、撮影現場ではなんともコミカルなやりとりが繰り広げられていたそうで、思わず笑ってしまいました。





また、この映画は日本語字幕版と音声ガイド版の制作をしていて、それついてもお話ししてくださいました。音声ガイド版では最後のセリフの「あたりまえのことなんだ」を30回くらい取り直したとお話されていました。


通常版と音声ガイド版と日本語字幕版、見えている世界が違うから感じ方も楽しみ方も違うけれど、心にじんわりと残る温かさは共通して伝わってくると思いました。




自分の見えている世界や自分が表現したいことを伝えるってとても難しいことだと思います。でも、自分の見えている世界だけを見続けることはとても怖いことです。怖くなってしまったら何を見たらいいのかもわからなくなってしまいます。


みんなでゆったりと座りながら、耳を傾けて、会話して、自分を見つめ直していく。そのような贅沢な場で素敵な時間を過ごすことができました。





レポート:前川瞳

写真:ヤマクラアユミ


 

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